上の原となん云ふ家数十三軒なる 兎ある草の
家へ立寄り 茶を乞ふにそ 齢五十斗りの婦 破れ
たる衣をかゝけ居たるか 俄ニ 鉄の薬鑵より出流
れの渋茶 茶碗にこほるゝはかり 大なる白木の盆に
乗せて出しぬ 

笠脱いて志はし休らふ草の庵に
蓑虫に似た女子茶を出す

何れ秋山ハ飲食共ニ里地よりも多き所なるべし 
又 煙草の火を乞ふに 燃る火の附たる八・九尺ある
柴の先き差し出しぬ 是や甚た興ニ入 面白けれハ 

多はこの火やりはなしにそさし出す
赤はたに似たほたの長さよ

都て此辺りは 取はけ 多は粉盆杯とハ 夢にも女
童都ハ知らす 案内の桶屋か噺なり 況其余おや 
又 傍を見るに 戸板等ハ 皆大樹の一枚皮を横に 
直なる小木の枝を前後より四通り斗りも細き縄
にて乱ニ結附 故ニ茅壁杯ハ尚更や  最早四ツ過
と見へて 此婦 蕪の根やうのもの鍋ニ切入込んたるを 
蓋して煮立頃なるへし 稗の粉やらん一・二合入て
掻廻すにそ 是や此辺の雑水とかや 暫ありて二十
斗りの男 鎌腰にさし 粟ハ門先におろし 内へ這入る 

つらの皮足の皮まて厚きやう
はたしてありく秋山の人

素足に洗足もせすして 筵のうへに平座して そんた(其方)
衆此様な処へ能ふ来なった時宜の挨拶ニ 短尺
四・五枚書いて茶代にさし出しぬ 此男ハ何んと云もんた
読んて呉なされと云ふ 一・二遍つゝ読み聞かせ 予此男ニ
云ふ 扨も秋山中ニ梅の木ハ壱本もないと聞 夜前
小赤沢て噺*ハ 春ハ鶯も沢山啼けな 鶯はかりて梅
のない村ハ面白からす 殊更小赤沢 此上の原・和山・屋敷
の村々は 取わけ平家の後胤と聞くからは 文字杯も覚
て能ささうな事也 里ニハ天神宮を祭りて梅なき家
*ハ 梅の花の枝ても備へて祭る 是読書の御神ニて 
御宣の歌ニも 梅あらは賤しきこんな伏家まて
我立寄りて文字を教ん とあれハ 梅の木植へて此
神を祭らは こんな短尺の文字ハわかると教へて 

秋山到処更莫梅  流石天神不祚来
扨社無筆文盲衆  短冊逆取見事*

梅ニ鶯と云ふ事ハ己も聞たか 春ハ梅はなけれと 里
よりも うくひすハ沢山戸口まて来る 梅ハ 里地より三・四層
倍寒い処たから 育て申さぬと云ふに 能く此家の様子
を見 残る十二軒の家へ立寄りなハ 猶興あるものあらんと 

大黒の柱も見へぬほつ立て家
ひんほう神の住居とや見る

ほつ立ての壁の替りは茅かきて
是や尾花の宿とや云ふらん

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