かきあみとは攩網なり、鮏を攩ひ捕るをいふ。その攩ひ網の作りやうは又ある木の枝を曲げあはせて飯櫃なりに作りこれに網の帒をつけ、長き柄ありてすくふたよりとす。岸の阻たる所は鮏岸につきてのぽるものゆゑ、岸に身を置ばかりの架をかきて、こゝに居て腰に魚*をさし鮏を掻探りてすくひとるなり。岸の絶壁なる所は木の根に藤縄をくゝして架を鉤り、こゝに居て掻網をするも稀にあり。幾尋ともなき深淵の上にこのたなをつりて身を置、一条の縄に命をつなぎとめてその業をなす事、怖しともおもはざるは此事になれたるゆゑなるべし。
初編巻之下 一覧
渋海川さかぺつたう / 鮭の字考 / 鮭の食用 / 鮭を出す所並鮭始終 / 鮭を捕る打切並つゞ / 掻網 / 漁夫の溺死 / 干曲川の総滝 / 鮭漁の類術 / 鮭の洲走り / 人家の垂氷 / 笈掛岩の氷柱 / 滝の氷柱 / 雪中の寒行 / 寒行の威徳 / 雪中の幽霊 / 関山村の毛塚 / 雪中鹿を追ふ / 泊り山の大猫 / 山言語 / 童の雪遊ぴ / 雪に座頭を降す



