農作物の病害虫は、昔は悪霊のしわぎのように考えられ、「虫送り」は悪霊を田畑から村の外へ追い出す行事であった。送り出す先は、岡田では今井境まで、小松原は貝沢や今里境までなど、決まって村境までだった。昔は村ごとの生活共同体であったから、村人からすれば村境だけが外の杜会との接触点であって、その内側は村人みんなの小宇宙であり、その地域の平和こそが唯一の関心事だったと思われる。
虫送りは、田植えが終わって、病害虫が心配になる七月下旬ころに行われた。小松原地区では、決まって7月24日に行っていたようである。虫送りの日には、夕方近く子供たちは夕食を早くすませてから、手に手に棒の先に麦わらをしばりつけたタイマツを持って、大川端(現上中堰)に集まり、タイマツに火をつけ高々とかかげ、大声で叫びながら村境まで虫を送った。 神社で虫送りの神事をした後、子供たちによって虫送りをした地域もあったようである。

虫送りは、子供たちにとっては、社会参加を認められたもっとも大きな、そして楽しみな行事でもあった。

虫送り行事は、稲作農業が始まったころからの伝承行事と考えられるが、農業が近代化するにつれ、昭和10年代にその姿を消した。

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