-- ウツボグサ Prunella vulgaris subsp. asiatica (0660) --
大正時代の植物事典 (大植物図鑑 "ウツボグサ")

原野路傍等に自生多き多年生草本にして莖の高さ一尺許多小叢生するの觀あり。葉は橢圓形にして方莖に對生し茎と共に毛茸を有す。六月頃莖頂に短大なる穂状花序をなし深紫色にして稍々美麗なる唇形花を着生す。
本屬(Prunella)の花序は穂状をなすものと頭状をなすものとあり。蕚は花後閉合す。花冠の上唇は弓形をなし雄蕊は二強、花絲の頂端は二裂して其の下に葯を有す。本種は北地に産するものにエソウツボグサ、叉深山に自生するものにミヤマウツボグサ等の品種あり。
【園】 俗にナツカレソウ(夏枯草)とも云ひ花の着生したる有樣靭に似たるを以て鉢植にし愛らしきものなり。花色に注意して採取すれば種々變化せるせるものあり。即ち紫、白、薄紫等なれど白は甚だ少し。培養の土は山土、野土などにて差支へなし。
【藥】 莖葉共に夏時採取して蔭干にして貯へ置くべし本品は瘰瀝、痳病等に効あるを以て使用の際は水に煎出し飲用す。叉花部の乾燥したるものは煎用すれば利尿劑として効用多きものなりと民間薬の一種とす。煎出の分量は適宜目分量にし差支へなきものなり。