大正時代の植物事典 (大植物図鑑 "アサガホ")

專ら觀賞用として愛養する一年生の纏繞性草本なり。本植物は菊花と同じく變種頗る多種多樣なれども通常は其の葉3裂して互生し莖と共に毛茸を有す。夏より秋に亙り普通漏斗狀をなせる大形の合瓣花を莖の上方葉脈上に着生し早朝開花し日光を受けて凋ぶことは人の知るところなり。秋の7草の1にあさがほと稱するものあれど夫はききやうの事を云へるものにて此植物とは同名異物なり。
【生】 生花として廣く應用せらるゝものなり。水揚法は鐡物にて切口を打ち挫き食鹽にて充分に揉みたる後水に挿すか、或は切り口を酒精中に一寸浸漬したる後水に挿すも可なり。又根本を揃へ煮湯に入るも可なり。(松島理學士水揚法に據る)
栽培法 本植物は其の變種甚だ多きものなれども其栽培法は凡て同一方法にて應用し得らるゝものなれば以下少しく一般栽培法に就き記述すべし。
用土 朝顔を培養するには先づ其の培養土を作らざるべ可らず。最も適當なる用土は塵芥の流れ込みたる泥渠中の揚げ土、塵捨場の塵芥土等を春に至り能く乾燥し、之れを篩にて竹片、小石、燒土、瓦碎等の雑物を篩ひ除け然る後適宜に疎き河砂を混じ1,2度下肥を灌ぎて能く煉り合せ再び日光にて乾燥せしめ雨の當らぬ處へ貯へ置くなり。
播種 4月中旬より6月初旬の頃迄は何時播種するも可なれども餘り早きに失すれば反って種々なる障害のため生育を妨げらるゝものなれば早きよりは遅きを結果良好とせらるゝなり。普通八十八夜後を適期とす。播種せんとするには先づ晴天の日を撰び凡そ5,6合程入るべき瓦鉢の底穴を瓦片又は貝殻にて塞ぎ鉢の半分程迄小豆大の土を入れ水抜けを充分にし其の上前項記述の培養土を入れ土面を平にし種子の間を一寸位宛隔て指先にて 2,3分程の穴を穿ち之れに種子を入れ其の上に細き川砂を種子の見えざる程に撒布し直ちに如露にて水を灌ぎかくるなり。此灌水は種子の發芽を早むるためなれども餘り多く與ふるときは反つて種子の腐敗を來す恐れあれば注意を要するなり。
移植 貝割の中より2,3葉を發生したる頃日和よき夕方を撰び根を傷めざる様1本宛拔き取り他へ移植し直ちに1回水を灌ぎて2,3日間は日除けをなすべし。苗が充分根付きたる時は其の土面を淺く掘りて少量の肥料を入れ花壇陳列するなり。之れより隔日位に尿2分水8分位の割合に混合したる肥料を與へ蔓の5寸許に生長したる時は心芽を摘み本蔓1本を生長せしめ其の生長するは從ひ莟を1つ置きに摘み取るなり。其の頃より尿3分水7分の割合に混合したる肥料を2日隔に灌ぎ枝芽は勉めて除去し支柱を與へて蔓を纆はしむるときは必ず大輪の美花を開くものなり。
【藥】 本植物の種子は「コンウォルウリン」なる成分を含有す。本種子を煎用すれば迅速なる潟下劑となる。尚本種子を黑燒にし呑服すれば脚氣の治療に大効ありと謂へど著者實驗せず。
江戸時代の植物事典 (長野電波技術研究所附属図書館 蔵書)
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