-- アメンドウ Prunus amygdalus 扁桃(1825) --

一名ヘントウと稱し、中央亞細亞原産の落葉喬木にして、幹の高さ二十尺餘に達す。葉は被針形にして其の形桃の葉に酷似す。花は殆んど無柄にして二箇宛聚生す。果實は桃果に似たれども多汁ならず。成熟すれば果皮乾燥し裂開して核を出だす。
本植物は古代の羅馬人によりて歐洲南部に移植せられ、現時は盛に伊太利、佛蘭西、西班牙等に栽培せら。本邦にては近來紀伊の南部に移植せられ、稍々良好なる成績を見つつあり。
【食・藥】 此の植物には主なる二変種あり。種子の甘きものを甘扁桃と云ひ、主として食用に供し、種子の苦きものを苦扁桃と云ひ、食用に供する外、種子の苦きものを蒸餾して苦扁桃水を作り、之れを鎭痙藥及び鎭咳藥に用ふ。