-- アサ Cannabis sativa 大麻(2627) --
大正時代の植物事典 (大植物図鑑 "アサ"

アサ園圃に耕作する一年生の草本にして春月種を下せば夏月方莖を直立すること七八尺に達す。莖葉共に粗糙にして莖は溝稜を有し、葉は對生し、長柄によりて先端に五七の小葉を射出し掌状複葉をなす。各小葉は被針状にして縁邊に鋸齒を有し分離せる托葉を有す。雌雄異株に生じ、雄花は總状花序をなし一花は五片の花蓋と五個の雄蕊を有し、雌花は穂状花序をなして一片の花蓋と一個雌蕊を有し、子房は上位にして二柱頭を有し果實は閉果なり。
【藥】 藥用に供するものは果實の成熟初期に於て採集したる雄花を有する草本にして印度大麻と稱し市場に販賣せらる。
本品は少しく臭氣を有する揮發油にして麻醉の効ある成分は樹脂とす。主として鎭靜藥及び催眠藥として内用に供すれども、叉外用として燻烟劑及び紙卷煙草として喘息を治するに用ゆ。
麻仁四合を水六合に混じ猛火にて煮沸し七勺に煎じ詰めたるものを空腹時に服すれば癲風を治するに効ありと。
【工】 大麻の皮を剥ぎたるものを麻と稱し各種の櫼維工業に使用するは周知のことなり。叉皮を剥きたる莖をアサガラ叉はガラと稱し火藥の原料に供し、叉七月の盆の節曾に使用する等需要多きものとす。
古來麻の産地として有名なるは栃木縣を最とし信濃、越後、安藝及び備後等之れに次ぐ。