-- ゴマ Sesamum indicum L 胡麻(0501) --
大正時代の植物事典 (大植物図鑑 "ゴマ")

畑地に栽培せらるる一年生草本にして莖は高さ二三尺に達し全體疎に分岐して短毛あり。葉は有柄にして針形の小托葉を有す。夏日梢上葉腋に一花づつ開く本花は筒状にして先端五裂し唇瓣少しく長く其の色白質にして少しく淡紫暈を帶ぶ。花後蒴果を結び黒色叉は白質淡黄色の小粒子を藏す。本種は元來東印度より渡りたる草本なりと。本種の花は四個の雄蕊を有し二個は長く二個は短く雌蕊は一個にして一花柱あり花後結ぶところの果實即ち蒴は別れて二つとなりこの分れたるもの再び細分して四乃至八室となり各室に多種子を含有す。此の種子には黒色、白色、茶色等あり食用には黒色種を佳とすれど搾油には茶色なる品種を重用す。
【工】 胡麻子は煞りて食用に供するのみならず油を搾り取りて種々の用途に供す。本邦にては重に油揚、天ぷら、揚げ物等に使用すれど、歐洲にてはオリーブ油の僞造に用ふると。其の他醫療用に供することあり。胡麻油の一種に白絞り(しらしぼり)と稱する者あり婦人の髪に使用す。本品は白胡麻を碎粉し搾製したる者なり。普通の胡麻油は黒胡麻或は茶胡麻を炒りたる後搾取するものなれど白絞りは炒らずして天日に乾燥し搾るものなり故に一名「ホシコ」の名あり。
【藥】 胡麻油は類黄色或は黄金色の脂肪油にして微に特異の臭氣を有し味は緩和なり。零下五度に於ては凝結して帶黄白色軟膏樣の塊となる。主成分は主として「トリオレイン」より成るものにて藥局方には單に單軟膏を製するに使用す。