-- キノ 吉納(1750) --

前印度殊に「マラバル」海邊の森林中に産出する常綠喬木にして、幹高さ四丈餘に達す。葉は奇數羽状複葉にして、各小葉は橢圓形をなし、其の末端は凹形をなす。花及び果實は前種シタンに似たり。
【藥】 本植物の下部に截口を附し、浸出せしめたる液汁を凝固せしめ日光に乾燥したるものを(吉納)と稱し藥用に供す。本品は暗赤色の塊をなし、質堅脆にして破碎し易く、冷水には僅に溶解して酸性を呈し、收歛性の味を有す。其の主成分は鞣酸にして、其の他少量の「ブレンツカテヒン」、「キノ」赤色素、「キノウイン」等を含有す。
本品は阿仙藥に於けるが如く、慢性下痢、膓出血、盗汗、子宮出血等に收歛劑として應用することあり。一日數回〇・五乃至、一・五を用ゆ。