-- カリン Chaenomeles sinensis 榠樝(1935) --
クヮリン 榠樝(1935)

一名カラナシと稱し、庭園に栽培する落葉果樹にして、幹の高さ二三丈に達す。樹皮は鱗状に剥け、其の痕跡雲紋をなす。葉は卵形にして尖り、縁邊に微細の鋭鋸齒を有し、背に微毛あり。春日五瓣の鮮紅色花を開く。果實は橢圓形にして頭尖り、凹凸ありて正しからず。秋末黄熟して稍々マクワウリに似、芳香を有すれども澁味ありて生食に適せず。
【藥】 本植物の果實は一切の肺病に特効奇功を奏する事實に不可思議なる程にて、編者の友人たる松島理學士の如きは肺結核の三期に至りたるものも初めのものは勿論、少々は進みたるものにても、本果實の煎汁を日に何回となく番茶を啜る代りに使用すれば六ヶ月間位にて全治した例が澤山に有ると其の著書に公表されて居る位なり。本果實を煎用するには先つ果實を輪切りに細剉して陰干しにし時に應じ煎用するなり。煎用の分量は一定せざれども成るべく多量に服用するを可とし飲み過ぎたりとて決して害とならざるものなり。
本果實の煎用は實に肺炎、肺炎カタル、氣管支カタル、瘰癧、腺病質の人に實行して何れも効能あるものなれば、之等の人は一時も早く實行し根治の喜びを得られんことを切望す。