-- ケシ 罌粟(2184) --

觀賞用叉は藥用として、園圃に栽培せらるる二年生の平滑草本なり。葉は無柄にして莖を抱き、長橢圓形にして縁邊分裂し其の色淡綠色なり。五月花あり、花色は深紅色叉は紫色にして最も美しく蒴果實は殊んど球形をなす。モルヒネはこれより製することは世人の知るところなり。
【藥】 藥用の主要部は落花後二三日を經たるとき其の果皮の中央より下部に至る間の周圍に截り口を附し、基處より滲出せる白色の乳液汁を凝結せしめて採集し、手を以て團結したるものにして、之れを阿片と云ひ、多く餠状塊をなす。
本圖は阿片採集のため截口を附したる果實を示す。
本品の主成分は「モルヒネ」にして其の他「ナルセイン」、「コデイン」、「ナルコチン」、「パパウェリン」、「ラバイン」等數十種の「アルカロイド」を含有すれども、多くは「メコーン」酸と結合して存在するものとす。
阿片の應用範圍は鎭痙藥及び止瀉藥を重なるものとし、藥局方の製劑は阿片越幾斯、「ドーブル」散阿片丁幾、阿片安息香丁幾、芳香阿片酒等とし、叉「モルヒネ」、「コデイン」等を製する原料として重要せらるるものとす。