A 50音 ア行
A 50音 カ行
A 50音 サ行
A 50音 タ行
A 50音 ナ行
A 50音 ハ行
A 50音 マ行
A 50音 ヤ行
A 50音 ラ行
A 50音 ワ行
C 大植物図鑑 刺花
C 大植物図鑑 学校園
C 大植物図鑑 工業
C 大植物図鑑 有毒
C 大植物図鑑 染料
C 大植物図鑑 牧草
C 大植物図鑑 生垣
C 大植物図鑑 盆栽
C 大植物図鑑 薬用
C 大植物図鑑 観賞
C 大植物図鑑 食用
C 大植物図鑑 香原料
-- コンブ 昆布(4209) --
4209.gif

ヒロメ、エビスメ、ウチコンブ、モトコンブ、オキコンブ或は單にコブとも稱す。古來ヒロメ(廣メ)の名に寄せて多く祝賀に用ひらる。北海道及び三陸の沿岸、殊に渡島の志苔村、小安村等は最も有名の産地なり。體形大にして長さ六七尺より二丈に達し幅一尺以上に及ぶ。我國海藻類中の最も大なるものにして體は根莖葉の區別なく其の根樣の基部は單に岩石に附着するの用をなすのみなり。葉状の部は褐色を呈し革質柔軟にして縁邊は少しく波状を爲し中央部とやゝ明瞭なる區別あり。養分は體の全面を以て吸收するものなれば特別の器官なし。夏日葉状部の面に暗褐色の子嚢を發生し、嚢中の胞子成熟すれば二箇の細毛を具へたる遊走子は海中を遊走し適當の場所に附着して發芽することミツイシコンブに同じ。

昆布はすべて亞細亞の東海岸に於て寒流に洗はるゝ海底の岩礁上に産す。露領沿岸の産は我北海道の産に及ばずと雖も其の價廉なるを以て生活程度の低き支那北部住民の需要に適す。叉北海道全沿岸並に本州北岸等に之を産するも其の良種を出すは渡島、膽振、日高、十勝、釧路、根室等にして樺太産の良品と共に支那への輸出尠からず。三陸産は品質やゝ劣り多く内地の需要に供す。叉昆布は廣濶なる岩石上よりも點々として散在せる岩礁上を好みて生育するが如くなるを以て特に膽振、渡島地方は良品を見ること多しと云ふ。

昆布の採收期は七月中旬より九月下旬迄にして此の間に採收者は船に乗込み棹を以て之を採收し運搬船に移し陸揚をなし砂上に並べ日光に曝し後、之を屋内に入れ筵にて覆ひ色澤の適度を見計ひて結束す。此の結束の方法に依り長切、元揃、折昆布等の名稱あり。

昆布の製品

(イ)長切昆布 ミツイシコンブ、コンブ等にて製す。此等の昆布を採收する時は枯葉蟲喰葉等を除き一葉づゝ砂上に並べ砂土ほろきを爲す、砂土ほろきとは一日に二三回乾場を換ふる事なり。やゝ乾燥すれば十葉づゝ手柄に束ね、夜間及雨天等の日は此の手柄を數箇所に集め晴天一日乾して屋内に入れ筵にて覆ふ。斯くして十數日後其の色澤の出づるを待ちて結束す。長切昆布の上等品は根本四五寸を切り長さ四尺、中結び六箇所、上結び七箇所、重量八貫目とし。中等品は長さ三尺五寸、中結び五箇所、上結び六箇所、重量八貫目。下等品は長さ三尺、重量五貫目とす。但長切昆布を二種に區別し得べし、日高、十勝産の如く鹽分を含む事少く葉肉やゝ厚きもの(北支那地方向)根室、千島産の如く葉肉薄く鹽分やゝ多く含むもの(揚子江沿岸地方向)是なり。昆布は斯の如く重要地の異なるに從ひ多少性質を異にするも其の上等品は枯葉赤葉等を混ぜず色澤美にして葉質能く揃ひ大小長短なく乾燥の充分なるものなりとす。

(ロ)元揃昆布 昆布等にて製す、其の法葉幅の縮まざるやう一葉づゝ伸して乾かし、夜間は一所に集めて筵などを覆ひ雨露を當てしめず、翌日之を反轉して乾かす、斯くすること四五日後、充分乾燥せるものを屋内に運びて積み重ね、板を載せて五六貫目の壓石を加へ一夜間壓迫し、翌日晴天に尚ほ乾燥すべし。結束するには前夜一時間許濕氣にあてゝ柔かならしめ、寸法を記せる小板に二枚並に積み重ね凡そ三十五乃至四十葉を重ぬるなり一端を三箇所だけ縛りて把となし、其の重量は二貫目内外とす。花折昆布は元揃昆布中良好なるものを選びて製す唯々異なるは折板を以て寸法を定め兩端より内に折込みたるものなり。

(ハ)折昆布 乾燥したる昆布を一葉づゝ砂土を掃ひ一端より卷物状となしたるを翌日解き、幅二寸長さ一尺五寸の折板を中心として幅七八寸に先端より縦に卷き、側方より板を抜き取りて積上げ、壓石を加へ一兩日曝乾す。重量は凡そ五百目とし、三葉、五葉、五七葉を合せて二三箇所を他の昆布を以て結束するなり。

長切昆布(イ)を原料としておぼろ昆布、白髪昆布、刻昆布等を製す、其の製法左の如し。

(い)おぼろ昆布 乾燥せる昆布の兩面を鉋にて削り去り、其の有色部のみを更に鉋にて薄片となしたるものなり。白髪昆布は該白色部を刻みたるものなり。

(ろ)刻昆布 東京と大阪とは其の製法にやゝ異りと雖も、要するに水一斗に付昆布一貫目許を入れ、之に多少の食鹽及び染色料として靑松葉七八十目を投じ三四十分間煮沸し、其の靑色に變ずるを待ち取出して二十分乃至四十分間之を空氣中に晒し、更に之をひき延し、壓搾して後器械にかけて刻み切り尚ほ乾燥するなり。此の刻昆布は關西地方に於て盛に需要あり。叉支那地方へも輸入せらる。

但昆布の着色料に有毒なる綠靑を用ふるものあり注意すべし。

【食】 昆布は食用としての需要のみにても頗る多く一種の炭水化物なる「マンニツトケシ」を多量に含み且つ非常に配分に富み蛋白質物亦頗る多し。其の成分は水分二六・八〇蛋白質七・七九無窒素物三二・五八纎維九・三三灰分二二・五〇なり。

支那人は昆布を海帶叉は紀帶絲と呼び、用途は單に昆布のみを煮て食することあるも野菜獣肉と共に煮て食用に供す。今左に食品及び調理法の一二を記述すべし。

(イ)昆布煮出 水一升を煮立てゝ其の中に二寸四角の昆布切れ十枚許を入れ直に鍋をおろし蓋をなせるまゝ暫時放置したる後、之を鉢に移し垽滓の沈澱するを待ちて其の上澄を硝子壜などに入れ置き調味の料に供す。

(ロ)昆布の砂糖漬 昆布を水煮し充分柔かになつたる後、細かに刻み一晝夜間淸水に浸し能く洗ひて粘氣を去り白砂糖を混和し煎りて水分を除き更に焙爐にかけ尚ほ多量の砂糖を混じ硝子壜などに入れて貯ふ。

(ハ)昆布酢 適宜の魚肉を大身に切り鹽水にて洗ひ酢に浸し置き。別に昆布を水にて洗ひ布巾にて其の水氣を拭取り其のまゝ右の魚肉を卷き之を鹽酢に暫時浸し置きたる後之を小口切にするなり。

(ニ)昆布佃煮 昆布を布巾にて能く拭ひ之を五分程の四角に切り酢のみにて煮たる後、醬油を加へ煎りつけるなり。茶漬飯の菜に可なり。

(ホ)昆布卷 板昆布を一夜間水に浸漬け置き適宜の大さに切りたるものを以て焼鮒を卷き、干瓢などにて一箇づゝ括り、之を鍋に竹皮を敷きたるものに入れ、薄醬油、味醂にて數時間煮たる後、更に醬油、砂糖を加へて濃く甘く煮るなり。

【藥】 昆布の食用として需要の多きことは前述の如くなるが此の他尚ほ沃土製造の原料となし。叉海藻酸、「マンニツト」等の製造にも多量に費消せられる。但昆布を久しく貯へなどする時は其の表面に白粉を生ずるものなるがこの白粉は「マンニツト」と稱し針状結晶の糖分なり。叉蒸氣機關の外側等を塗るに用ひらるゝ「カーボンセメント」は海藻酸及び昆布灰等を原料として製造するものなり。左に沃土製造の梗概を記述すべし。

沃土は沃土丁幾、沃土ホルム、沃土加里の如き藥品として用ひられ、工業上にては「アニリン」色素の原料として用途廣し。沃土は動植物及び礦物の或る一部に化合體として存在し殊に海藻には多量に存在す。されば沃土は主として海藻の灰より製出す。本邦に於て該製造を開始せしは明治一八九年頃にして爾後製造の事業大に發達し、相、駿、遠、志、房總の各地及び奥羽、北海道等に於ける沃土製造所は無慮百數十箇所の多きに達せり。其の製造の材料として使用するは主にカヂメ屬昆布屬の海藻にして北海道に於ては漂着せし昆布、屑昆布、カヂメ等を以て製造の材料とす。先づ海藻を採收せば能く之を乾燥し置き、天候を見定め所謂沃土灰を製すべし。其の法粗朶を高さ一尺幅二尺位の大さに積上げ、其の上に枯草海藻類等を薄く被ひて諸所に點火し可成火焔を揚げて燃焼せざるやうに壓し附くると同時に其の上に上にと海藻を積上げて四尺乃至五尺位に爲す、終りに濡?を被ひて放置し火氣なきを檢して俵詰にするなり。規模大なる製造場にて行はるゝ法は海藻を密閉したる爐中にて空氣を遮斷して加熱し以て炭化せしむるものにして、乾溜法なれば沃土分の飛散する恐なきもみならず種々の副産物的乾溜物を得るものなり。其の一例として乾溜せる海藻より得る成分は木炭及び灰分四七・〇四〇「タール」二・一二三水其の他の液二七・一五一瓦斯二三・六八六にして水及「タール」よりは揮發油、「パラフィン」、「ナフサ」、「アムモニア」、硫酸「アムモニア」、醋酸、醋酸「カルシユム」等を得、木炭よりは純木炭、鹽化加里、鹽化曹達、不溶性灰、沃土等を得べし。斯く得たる沃土灰は所謂浸出法を行ふて可溶性鹽類(沃土)と不可溶性鹽類とを分離す。其の浸出法は大なる樽に格子底を設け蓆を敷き其の上に沃土灰を盛り水を注入して一夜間放置し底部に設くる呑口より其の浸出液を別器に流入せしむ之れ一番液にして最も濃厚なるものなり。後更に水を注加し一夜間放置し流入せるもの二番液なり。右と同じく三番四番の浸出をなせども三番液以下は新に沃土灰を浸出するに使用するを可とす。此の浸出法に就きても大規模の製造場に於ては曹達製造に普く行はるる「シャンクス」氏の浸出器を採用す。斯く浸出したる液は未だ稀薄にして直に沃土を採取する能はざるのみならず、有用なる鹽類を含有すること少からざる故、之を分離することも亦經濟上必要なれば浸出液を蒸發して濃厚ならしむべし。浸出液を濃厚ならしむるには蒸發器を以てするを得べしと雖も、英國「パッターソン」氏の製造場には數箇の蒸發鍋を設け、該鍋に浸出液を注入し煮沸蒸發し其の沸騰液面に鹽膜を生ずるに至り、結晶器に移して結晶せしむ、玆に生ずる結晶は凡そ硫酸「カリウム」五〇%、硫酸「ナトリウム」及び其の他の鹽類三〇%、水二〇%を含有す。此の結晶を除去して得たる母液は更に之をもとの蒸發鍋に入れ熟して煮沸するに至らしめ其の際折出し來れる「ナトリウム」鹽類を掬み取り更に結晶膜を生ずるに至り、結晶器に移して放置する時は「クロールカリウム」の結晶を生成すべきを以て之を採取し、更に數回反複蒸發結晶せしめて「クロールカリウム」を採取して得たる最後の液は即ち沃土粗液にして沃土二乃至三%を含有す。此の沃土粗液より沃土を折出せしむるには先づ其の硫化「アルカリ」亞硫酸鹽類等を分解せしめんが爲め硫酸を漸次注入し、其の際炭酸、硫化水素、亞硫酸を發生し硫黄を折出すべし。十數時間放置して硫黄分を沈ませしめたる後、更に硫酸を加へ凝縮器の半球形罐に容れ鉛製の蓋を装し、過酸化マンガン末を投入し熱して煮沸するに至らしむ、玆に發生する沃土蒸氣は互に連接せる圓錐形、硝子製の受器に入りて凝縮す。沃土は劇藥に屬すれば硝子瓶中に硝子栓を装し注意して冷所に貯藏すべし。

沃土製劑

沃土の藥効を主とせる種々製劑甚だ多し左に其の數種を説明すべし。

(イ)沃土「ナトリウム」 乾燥白色結晶性の粉末にして引濕性強く味苦鹹。應用沃土「カリウム」に同じ。

(ロ)沃土丁幾 酒精十二分に沃土一分を溶解したるものにして暗赤褐色を呈す。専ら外用として肋膜炎關節炎に塗布す。

(ハ)沃土鐵舎利別 沃度四一分、蒸餾水五〇分を硝子壺に入れて絶へず攪拌しつゝ徐々に鐵粉一二分を加へて得たる類綠色の液に單舎利別八五〇分を盛りたる瓶中に濾入し、更に蒸餾水適宜を注ぎ全量を千分にして製す。貧血、腺病諸症に應用す。

(ニ)沃土「フエラトーゼ」 沃土「フエラチン」の溶液に甘味を附しくるものにて前品の代用品に使用す。

(ホ)沃土「フオルミン」「ヘキサメルチレンラトラミン」に酒精製「ヨードフオルム」溶液を作用せしめて製する白色結晶性の粉末にして水に溶解せず。

(ヘ)沃土「ピリン」無色の結晶、酒精並に熱湯に溶解す。本品は解熱、鎭痙、變質の目的を以て結核病、「チブス」、喘息、偏頭痛、黴毒等に應用す。


お問い合わせ
ギンジョー薬草ハーブ日和
植物図鑑
1779 記事
  •  江戸時代の本で
  •  植物図鑑を作っています。
  •  所蔵している書籍は,
  •  複写に対応できます。
本草綱目
本草綱目
李時珍 著
花譜
花譜
1694 貝原益軒 著
農業全書
農業全書
1697 宮崎安貞 著
広益本草大成 / 和語本草綱目
広益本草大成
1698 岡本一抱 著
菜譜
菜譜
1704 貝原益軒 著
用薬須知
用薬須知
1712 松岡恕庵 著
大和本草
大和本草
1708 貝原益軒 著
和漢三才図会
和漢三才図会
1712 寺島良安 著
草木育種
草木育種
1818 岩崎灌園 著
遠西医方名物考
遠西医方名物考
1822 宇田川玄真
日本山海名産図会
日本山海名産図会
1830 蔀関月 著
四季漬物塩嘉言
四季漬物塩嘉言
1836 小田原屋
古方薬品考
古方薬品考
1841 内藤尚賢 著
草木六部耕種法
草木六部耕種法
1874 佐藤信淵 著
神農本草経
神農本草経
当研究所所蔵の神
薬徴
薬徴
吉益東洞著,江戸
薬徴
凶荒図録
1885 小田切春江
古事類苑(植物)
古事類苑
明治時代に和装本
大植物図鑑
大植物図鑑
牧野富太郎のライ