-- ストロファンツス (0822) --
亞非利加の西部或は東部に産出する藥用植物にして高さ一丈餘に達する蔓性の灌木にして全面に淡黄色或は類白色の絨毛を密生す。葉は對生し橢圓形をなし縁邊は全邊にして莖と同じく絨毛を有す。尖鋭なる副葉を有する花梗を出し白色にして五裂せる奇形の合瓣花を着生す、本花は五裂せる先端尖鋭の蕚を有し、花冠は漏斗状にして外部は白色、内部及び基脚は黄色にして紫色の斑點を有し、其の下部は管状、上部は鐘状をなし五瓣に分れ各烈片は先端長き線状をなす。雄蕊は五箇、子房は二室に分れ多數の胚子を含む。種子は頂端尖鋭にして絨毛を有し先端に毛冠を載く刺嘴を着く。
【藥】 本植物の植物を「ストロフアンツス」子と稱し藥用に供す。此種子は多くの毛茸を被り其の先端に向つて併伏し常綠灰褐色或は類褐色を呈し常に著しく類綠色の光彩を帶び味甚だ苦きものなり。藥用として「ストロフアンツス」には二種の區別あり一を「ストロフアンツス、ヒスビヅス」と云ひ一を「ストロフアンツス、コンベ」と云ふ。日本藥局法にては第二の種子を採用せり(本圖は「ストロフアンツス、ヒスビヅス」を掲ぐ)最近の試驗によれば右二種の種子中に含有する配糖質は不同にして前者は種子中に「ブソイドストロフアンチン」を含有し強硫酸によりて赤色を呈し、後者は配糖質「ストロフアンチン」を含有し強硫酸により藍綠色を呈するものとす。
「ストロフアンツス」子は心臓強壯藥及び利尿劑として賞用せられ其の製劑は丁幾劑とす。