-- ゼニアオイ Malva sylvestris var. mauritiana 錦葵(1319) --
大正時代の植物事典 (大植物図鑑 "ゼニアオイ")

歐羅巴の原産種にして本邦には専ら庭園に栽培する二年生草本なり。莖は直立性にして高さ二三尺に達し、葉は五乃至七裂して縁邊に鈍鋸齒を有す。六月頃各葉腋に淡紅色にして紫條を有するもの或は深紅色叉は白色の美花を開き、梢の上方にありては穂状をなすに至る。時に重瓣の品種を見ることあり。本屬(Malva)は分離せる三個の總苞を有し蕚片は五裂し花瓣は凹頭にして基脚合同し、雄蕊は柱状をなし、上部分裂して數多の花糸をなす。子房は多室、花柱は子房の室と同數にして柱頭は線形をなす。
【觀】 専ら觀賞用として一般草花と同樣春秋の彼岸に播種し仕立つるなり。多く鉢植とするに適す。
【藥】 葉及び花を取り陰干にしたるものを煎出し咽頭炎症に含嗽すれば妙効あり。