-- ツハブキ 石蕗,橐吾(0203) --
大正時代の植物事典 (大植物図鑑 "ツハブキ")

單にツハとも叉ツバブキ、ヤマブキ、タカラコ等とも云ふ所あり。庭地に培養する多年生草本にして毎年地下莖より長柄を有する廣心臓形の葉を叢生す。其の形フキに似たれども小形にして厚く表面紺紫色を帶び縁邊は全邊の如くなれど處々に少許の突起あり幼き葉は多毛なれども生長したるものは葉面滑澤にして光澤あり。
十月頃二尺許の花軸を出し小梗を分ちて黄色の小頭状花を群生す。
本種には一種大形なるものにオホツハブキ、葉は長橢圓形にして葉柄に附着する處凹入し矢の根状を呈するによりヤノネツハブキと稱する品種等あり。
【食】 僻地の人は此葉柄を取りフキの如く食用し叉鹽漬として貯藏す。
【園】 園藝家の中には之を冬の七草の一に算ふる者あり鉢植としては餘り賞美する價値なけれども庭石近邊、或は手洗鉢の前などに栽植し気品あるものなり。
【藥】 本植物の小形なる稚葉を取り熱灰中に挿入れ柔軟になりたるものをよく揉みて腫物の上に貼布する時は如何なる難物も必ず膿を吸ひ出す特効あり。
【生】 生花用として使用すること多きものなり水揚法は根本に食鹽を附けたる後焼きて挿入する一方花器の中へ石灰水を入るるを可とす。或は根本をモグサにて包みたる上焼くも可なり。叉之を?ひ置かんとするには根本へ椿の油の如きものを塗り蝋燭の如き燈火にて焼き入れ置くべし。(理學士松島氏水揚法に據る)