-- タチジャコウソウ Thymus vulgaris (0680) --
大正時代の植物事典 (大植物図鑑 "タチジャコウソウ")

歐洲南部殊に伊太利より「ポルトガル」に至る地中海々岸地方に産出する小灌木樣草本にして主として藥用に供するものなり。葉は方形にして小なる被針形葉を對生し、下部にものは小葉柄を有すれども上部に至れば之れを缼き葉面に短毛及び油線を散在す。花は淡紅藍色を呈する唇形花にして莖の上部葉腋上に四五箇宛着生す。花冠は四裂し一瓣は上方に三瓣は下方にありて唇瓣をなし内に四雄蕊(二強)一雌蕊を有し花冠の下部に着生す。
【藥】 本植物の全部を開花の候採集し「チームス」草と稱し藥用に供す。香味共に芳香性なり。其の主分成分は「チーメン」なる揮發油及び「シーメン」、「チモール」よりなり主として香味料に賞用せられ叉芳香性の附加藥に供す。