-- トロロアオイ Abelmoschus manihot Medik 黄蜀葵(1326) --
大正時代の植物事典 (大植物図鑑 "トロロアオイ")

一名ネリ叉はトロロとも云ふ。支那の原産にして本邦には廣く栽培せらるる一年生草本なり。葉は掌状にして深裂し、各裂片は粗鋸齒を有し時に小裂片をなす。夏日褐色紫心の大形花を開き花後蒴果を結ぶ。本屬(Hibiricus)は草本若しくは大本にして五箇以上の卵形叉は卵状被針形の總苞を有すれども稀に缺如することあり。子房は五、花柱も亦五個を有し果實は蒴果なり。
【藥】 本植物は民間藥として使用せらるること甚だ多きのみならず、其の効能も亦頗る多大なるものなり、左に重なる用法を列記すべし。
イ 花及び子實とは痲疾、水腫に煎服して効あり。
ロ 本植物の根は乳汁を利す特効あり。
ハ 花及び子實を乾燥したるものは之れを粉末とし湯火傷、亞瘡に塗布すれば特効あり。
【工】 本植物の根を採りて糊を製し製紙の原料に混加す。最も此糊は日本紙製造の際使用するものとす。