-- ダイダイ 橙・回靑橙(1540) --

園地に栽培する木本にして、樹梢聳立し高さ一丈五尺許に達し樹上に刺を生じ、葉柄翼状を有す。果實は正圓形をなし重量四十五六匁を算す。瓤嚢は九個乃至十一個にして内に各二個宛の種子を包有す。味苦澁にして生食に適せず。本果はよく二三年間枝上にありて、新果の生ずる季節に至り綠色に變じ、新果の熟期に及べば再び黄紅色となる、故に回靑橙の名あり。本種は蒂の下部に五出の殘蕚を附し、其の周邊に數篠の細溝を現出する特徴あり。
本果實は生食するに佳ならずと雖も、搾りて橙漿を得べく、果皮よりは橙皮油を採取し、藥劑の矯臭及び矯味に用ひ、或は水に加へて飲料に供する外、花を蒸餾して橙花油を採り矯臭叉は香水の原料に供す。其の他正月の門飾り等に用ふるは人の知る處なり。
【藥】 成熟したる果實の皮及び未熟なる果實の乾燥したるものは苦味健胃劑として特効あり。叉果皮の汁液を熱湯中に絞り出し飲用すれは發汗劑となる外、果實を横斷して火に焼き、之れを布に包みて搾りたる汁は頭雲を落すに頗る妙なり。