-- ツルドクダミ Polygonum multiflorum 何首鳥(2521) --
大正時代の植物事典 (大植物図鑑 "ツルドクダミ")

山野に自生する多年生纒繞性草本なり。葉は心臓形をなして先端尖り葉柄及び鞘状托葉を具へ互生す。秋日葉腋に花莖を抽き白色の細花を圓錐状に綴る。本植物の根は巨大の數塊を蓮接し藥用に供せらる。
【藥】 本植物の根は藥用植物として一時坊間にて盛に販賣せられ其の名廣く人口に稱揚せらるるに至りたるものなり。
藥種商は本植物の漢名を其の儘音讀しカシュウと稱し販賣す。重なる用法は其の根を粉末としたるものを一日一囘一匁を空腹の時酒にて飲下し、疾病の時は茯苓の湯煎にて飲下すれば不老長生の靈効を有す。儒醫岸原鴻太氏は何首鳥二斤、白茯苓一斤、五味子一斤とを合せて四斤を臼にて搗きたるものを粉末とし、朝夕食前に二匁づつ酒叉は鹽湯にて服用すること凡そ七八ヶ月に及べば頽齢六十五歳に及ぶも無病強健、精力絶倫老ひて尚陽道の勃如たるを覺ゆと云ふ。叉本品に柯杞を混じて煎用するも頗る効あり。蓋し漢方にては本品は腰膝痛、足痛、盗汗、瘰癧、結核、出血、癰瘇、毒瘡、癩病、腎臓病、肝臓病、の妙効藥として重用するものとせり。
本植物の生葉を焙りて腫物に貼れば膿を吸出す。但し本植物の藥用品としての効用は支那産を以て第一とす。