-- ヌルデ Rhus javanica 鹽膚木(1463) --
大正時代の植物事典 (大植物図鑑 "ヌルデ")

一名フシノキとも稱し、山地に自生する落葉喬木なり。大なるものは高さ二丈餘に達し、葉は羽状複葉にして長さ一尺許、總葉柄は小葉間に翅を有す。七八月頃の候複總状花叢をなして綠白色の小花を儧簇す。核果は紫色及び白色の短毛を密生し、熟するに至れば外面に白粉を生じ味鹹し。此に植物は其の葉に暗色の贅生物を生ずることあり。これ一種の昆蟲の巣にて之を五倍子即ちフシと稱し藥用及染料等に用ふ。
【藥】 フシ(五倍子)の粗末一分を稀酒精五分に浸出したるものは收歛劑として諸器管の止血劑止痢劑及下毒劑として一日數回十滴乃至三十滴を使用す叉五倍子と硫黄を薑汁にて調へ、次に麁布にて患部を擦り洗ひ淸めたる後茄子のへたに右の藥汁を浸して塗布すれば瘢病を治す効あり。