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-- ミカン 蜜柑(1535) --
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暖地に栽培せらるる常綠の灌木にして、幹高さ一丈餘に達す。葉は長卵形にして互生し、葉柄の左右に小翅を有し、其の上端に節を具ふ。花は白色の五瓣花にして、熟すれば黄褐色を呈す。

【食】 本植物は本邦果樹中多額の産品を見る果實にして、自然栽培變種頗る多きものなれば、左に少しく其の種類につき記述し、尚蜜柑類一般の栽培法につき記述すべし。

蜜柑の種類

蜜柑には其の種類甚だ多きものなれど、就中重なるものは温州蜜柑、八代蜜柑、紀州蜜柑、絹皮蜜柑、紅蜜柑、櫻島蜜柑等とす。

(イ)温州蜜柑(1536)本種は氣候最も温暖なる地方に産し樹性は強健にして豊産なり。花は白色にして百合の花の小なるが如く、果實は中等大にして扁圓形をなすも正圓形をなす。外皮は薄く、表面平滑にして熟すれば濃橙黄色を呈す。瓤嚢は多漿にして味頗る甘く、其の數十一個乃至十二個を産し、内に種子を有せざるを特徴とす。蜜柑類中第一位を占むるものにして紀州の鳴戸地方に栽培せらるれども、現今にては相州地方にも亦多量に産出す。

(ロ)八代蜜柑(1537)肥後國河内郡の産なれば叉河内蜜柑と稱せらる。葉は大形にして濃綠色を呈し翼状を有す。果實は中等大にして扁圓形をなし、皮稍々厚けれども温州蜜柑に似て外觀は美なり、味は甘酸相半ばして佳良なれども品質温州蜜柑に及ばず。現時は紀州より産するを以て八代蜜柑と稱す。

(ハ)紀州蜜柑 紀伊國有田郡の特産にして、現時西海、南海、東海の諸州に至るまで栽培せらる。葉柄は翼状片なく、葉形稍々長く、果實は中等大にして扁圓形をなし、果皮薄く橙黄色を呈し、表面圓滑にして漿液多く、味甘くして核子極めて少し。尚本植物は其の成長頗る良好なるを以て栽培者に利益ある品種とす。俗に本蜜柑、叉小蜜柑と稱し、紅州蜜柑の名聲を博したるものは此の種類なり。

(ニ)絹皮蜜柑 果形は扁圓にして皮頗る薄く、表面平滑にして熟すれば橙黄色を呈す。本種は表皮瓤嚢に附着して永く貯藏に堪ゆ。多く伊豫に産す。

(ホ)紅蜜柑 果形は中等大にして扁圓形をなし、熟すれば帶黄紅色を呈し、瓤數は十一個より十二個、種子甚だ大なり。伊豆地方より産するものは多く此種類とす。

(ヘ)櫻島蜜柑 大隅國櫻島の原産種とす、果形は圓くして小、稍々紅州蜜柑に似たり。外皮は薄く粗糙をなし、濃橙黄にして核子少なく、漿液多く味甘くして佳良なる種類に属す。

柑橘類栽培法

本項は蜜柑屬の説明なれども便宜上柑橘類の栽培法を記述したれば、蜜柑以外につきての栽培法も全部本項を參考すべきものとす。

土質 柑橘類は砂土、壤土、腐植質土何れの地にても生育すれども、就中粘質の壤土、若しくは礫質の土壤よりは最も良品を産出するものとす。

移植 晩春新芽の稍々萠發したる頃移植す。先づ直徑二尺餘、深さ一尺三寸位に穴を堀り、その底へ堆肥若しくは厩肥の腐熟せるものを入れ、其の上に細土を以て間ひ土をなし、良く平均したる中心へ苗を置き、二方より竹を交叉して苗木に結び付け、其の根が最初地に埋没したる丈け地中に埋むべし此の際少くともその樹全體の三分の一を切り捨つる心持ちを以て剪枝するを可とす。若し枝葉を惜みて其の儘に植ゆる時は、根と幹との灌衡を失ひ、地中より吸收する水液は枝葉の蒸發を保持するに不足を來す以て、遂に枯葉を生じ、或は凋衰して枯死するに至ることあり。

柑橘類の幼樹は其の性頗る寒氣を畏るるものなれば、移植後の六七年間は晩秋降霜の前に、萱、篠笹或は藁の類を其の周圍に建て、勉めて防霜、防寒の手段を取る必要あり。
管理と施肥 移植初年よりの順次手入法を記述すべし。

(イ) 初年には根許を去る一尺五寸位の所を、九月中旬即ち彼岸頃に深耕して土壤を起し、株の周圍に藁若くは麥稈、乾草等を撒布して乾燥を豫防し、若し卑濕に過ぐる場合は溝を堀りて排水を促し、時に雜草を除くべし。肥料は一反歩人糞尿三百貫と、過燐酸石灰八貫、鯡粕十貫位を植付株數に分配して、春秋二回施すを可とす。

(ロ) 二年目の管理法は初年と同樣なれども、秋季に株際を距ること二尺許りの所へ、圓形に淺く溝を掘り、腐熟せる堆肥、厩肥を埋め、春季に於て初年に用ひたる肥料の同量を施し、其の他は初年と異るところなし。

(ハ) 三年目は大略前年と同樣なれども、生育充分なるものは、晩春の頃に枝頭所々に花蕾を附くれども開花せざる前勉めて摘み取り、枝葉の成長を助くるを可とす。第四、第五年は大略前年と同樣なり。

(ニ) 六年目に至れば枝上に多く花を附くるを以て早く付きたるものを殘して、遅きものは摘去し、其の他屢々樹間の耕耘、除草等を行ふ必要あり。而し根の周りを餘り深耕する時は爲めに細根を損傷して樹を衰弱せしめるを以て注意すべし。肥料は晩春開花に先きだち、株際を距ること二尺五寸乃至三尺の周圍に輪状の溝を掘り、之れに一株當り、人糞尿五貫目を三倍に稀めて施し、尚花の將に落下せんとする頃人糞尿五貫目と油粕三百目、過燐酸石灰四十匁を施すべし。

(ホ) 七年以後は、枝上の蕾を摘み取らず、一つに開落に任せ、丁寧懇倒に培養すること前年と異ならざれども、若し枝葉繁茂し大氣と、日光との照射を妨ぐる等のことあらば枯枝及び重朶を煎り取り其の適度を保つを可とす。爾後年々同樣の手入れ施肥を行ふものとす。

繁殖法 枳穀の砧木に、切接ぎを施すを最も安全なる繁殖法とす。其時季は晩春新芽の稍々萠發したる頃、種穂を利刀を用ひて三芽を具へて、楔状に削り、砧木を地上一二寸の長さに鋸斷し、之れを平らに削り、その片端しを皮と材質との間より切り下げ、接ぎ穂を其の間に挿し、(此際穂と砧木との密接することに特別注意を要す)、打ち藁を以て之れを縛し、此の部に空氣叉は風雨の侵入を防ぐ爲めに、粘土若くは木蠟を塗抹し置くべし。

種穂は最も壯健にして年々多量に結果する、南方にあつて能く日に觸れたる新枝の中より、良き枝を撰びて剪り取り、施行に際して枝の穂先き四分は之れを切り捨て、基本の六分を種穂として用ふべし。接木後は砧木の根より櫱の發生するものなれば注意して摘み取り。夏土用後に至つて愈々活き着きたること確實とならば、時々稀薄なる人糞尿を施して、苗木の勢力を計るべし。

剪定法 柑橘の剪定時期は果實採收後より、新芽發生までの間ならば何時にても可とすれども、通常二三月を好時節とす。都合によりては果實採收後の晩秋に行ふも可なり。柑橘類は枝端に結果するものなれば、剪枝は特に徒長せる新梢の剪定に止め、樹の姿勢は圓く四方に延び、所謂半圓形に作るを良しとすれば、特に挺んでて上に延びたる枝は之れを剪定するを要す。然らざれば全體の勢力は此の枝に奪ひ去られ、下層にある枝葉は衰弱し、甚だしきは枯枝に至ることあり。叉枝と枝と相交叉して、互に摩軋し或は重なり合ふ時は、其の弱き枝の方を剪り取り、空氣及び日光の透過を計るべし。樹勢壯健にして同じ樣に剪枝し、栽培を行ふも結實の少なきものは接木を行ふ時、種穂の惡きによるものなれば速かに中段より伐り去り、良種枝を撰び居接ぎするを良策とす。

收穫 種類により、成熟に早晩あれば一定すること能はざれども、大抵十一月初旬より十二月下旬に終了す。最も兒玉蜜柑、鳴門蜜柑等は他の温州蜜柑や、紀州蜜柑と同時に花を咲き、實を結べとも冬月厳寒を凌ぎ、翌春に至り漸く靑黄色となり、初夏に至つて黄熟し、金橘、金棗などは、普通蜜柑より遅く開花し早熟するものなれば此れ等は特別とす。總べて果實を收穫するには、好天氣の時、剪定鋏にて果梗を短く剪み取り、之れを竹籃に盛り屋内にて良否を撰別し、無疵のものを貯藏用に供し、其の他は直ちに販賣に附すべし。若し運送の爲め市場迄に時日を要する時は其の要する時日丈ヶ前に採收する樣に心懸くべし。

貯藏 北向きの家屋にて東西南の三方を厚壁となし北の方丈ヶ出入口を設け、其の中へ細丸太を二尺の距離に置き、其の上に板を並べ菰を敷き、蜜柑を厚さ一尺乃至二尺位に堆積し、其の上に靑木の葉を厚く覆ひ置き、出入口を密閉すれば、仲々久しく貯藏することを得。此の貯藏所の西南に樹木ありて日蔭となれば殊に宜しとす。叉卑濕の地は貯藏所としては不適當なり。雨天叉は朝露の未だ乾かざる内に收穫したる果實は腐敗し易く、貯藏に堪へず。無疵の「ネーブルオレンジ」などは、十二月より五月の末まで貯藏し、一割五分の腐敗果を出す許りにて、他は完全に貯藏せらるるものとす。

屋外にて貯藏せんとするには、先づ水濕の停滯せざる場所へ、三尺位の深さにて長さ及び幅の適當なる穴を掘り、其の底へ厚さ五寸許りの羊齒類の葉を敷き、其の上に厚さ一尺許りの果實を積み、其の上に落葉を五寸許り覆ひ掛け、更に其の上に藁を被ひ置けば、果實は安全に貯藏し得らるるものとす。但し無疵のものを撰ぶことは貯藏の一大要件とす。

【食】 蜜柑の生食は普通に行はるるものなれど、其の他二三の加工調理法を記述すべし。

(イ)蜜柑の砂糖漬 傷なき蜜柑を取り煠でて水に浸し、再三之れを繰り返して酸味を去り、別に砂糖を溶解し、鷄卵の蛋白を加へて汚汁を去り、前の蜜柑を入れて煮ること三時間許りにして之れを壺の中に收め、數十日を經過せしめたる後薄く切り、白砂糖をふりかけて食すれば頗る美味なり。

(ロ)蜜柑のふらい 蜜柑の皮を剥ぎ薄く輪切りとなし、鷄卵及び砂糖を加へ牛酪にて揚ぐ。

(ハ)蜜柑酒の製法 酒一升に蜜柑五箇の剥ぎたての皮若しくは乾皮ならば二時間餘水に浸したるものを取り、酒と併せて蒸餾し約六合を集め、壜に詰め栓を施して密閉し、暫時放冷したる後、酒石酸二匁白砂糖八十匁とを混加し、之れを布帛にて濾過し再び壜に貯へ隨時飲用す。


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