HOME ▶ 信州更級郡岡田村寺澤家文書


聖賢至言集

  此書ハ古ひ聖賢明哲の至言を書集、これを座右に置、毎月一覧、
  則バ考悌忠信の道を知り此を守る、則んバ身修事疑なし、身修

れバ家斉へ、家斉ふれバ孝なり悌也、一切の善事これより始る、

若亦此書に背き無道を行ふときハ、神明仏菩薩の聖慮に背き神
  仏の罰を蒙り家を失ひ身を滅す事速なり
  一日々に三度づゝ我が身をかへり見て悪を止め善に進むべし、如     
      此行ふときハ禍ハ消へ福へ来り家内繁昌致し子孫長久なる事其  
          中にあり
寛政七乙夘歳八月吉日
寺沢氏直興書

(一)楠正成公壁書

一 常に忠考の道を忘るべからず
一 慈悲正直堪忍を心に忘るべからず

(二)正成卿家臣恩地左近太郎聞書之内抜写

(三)孝行を専可勤事

一 古人日、考経日、子日、夫孝ハ徳之本也家業を○第一ニ可勤事
一 万里小路藤房大納言常談ニ、公家ハ公家を忘る事なけれバ敷島
   の道うとからずして仁義にくらからぬ物也知足事
一 古人日、食ハ飢ざるに止まり、衣ハ凍へざるに止まり、家居ハ
   漏らざるに止り、身ハ病ざるを楽しミ、楽ハ睦しきに止り、富      
   ハ足ることをしるに止まる

   侈戒むべき事

一 身にハ五色を粧、食ニハ八珍を尽し、玉桜金殿を作て楽ミにふ
   ける国ハ亡ぶるもの也
   好色を禁むる事
一 古人日、色欲を好む事なかれ
   邪欲を、禁
一 古人曰、邪欲とハ取まじき財を集めるを云
   遊宴を禁
一 古人日、遊宴ハ国家を亡す端なり大酒を禁む事
一 古人曰、大酒ハ家を失ひ、国を亡す事、相模守直時入道の如し
   博奕を禁む事                           
一 古人曰、 博奕ハ双六にかぎらず金銭をかけ勝負するハ皆博奕なり
   学問之事
一 八歳より手習可致事
一 十歳の此より夏秋農業取納之節ハ見習少々づつ手伝せ可申候
   十二三歳より考経四書等よませ可申候
一 小学考経四書等よまざれバ物の理も不知、当分之文字も読かね、
   不自由成ものに候へバ読べき物也、十五六歳までに読べき也
一 学問之道ハ書を読、古事を知るばかりをいふにあらず、書ばか
   り読ハ物読坊主と云もの也、夫、学問の道とハ第一に身を敬ミ
   義を以て君を貴び仁愛を以て父母に事、信を以て友に交り広
   く人を愛し貧窮の人を愍ミ功あれども伐らず、衣類食物家作諸
   道具等に至まで倹約を守りて美麗をなさず、家業に疎からず財
   宝ハ年々の入りを量りて出するを節し法を守りて家を治む
   学問の道有増是なり
一 譬ハ千巻万巻の書を習へても物の理を不弁不忠不幸不慈悲不敬
   を致し家業にうとく家治らざる者ハ一文通の人なり
一 譬ハ書を読ざる者も正直にして
一 譬ハ生得不根気にして書を読む事能ずんバ、御高札・今川・大
   学・考経等ハ小冊の書に御座候得バ能々読ミ物の理を知べし、
   此書身を修、家を斉、要書なれば也
一 仮名本に民家分量記、民家童蒙解等ハ百姓の当分の事をほゞ記
   し置し本なれバ見るべし身修るの助けに成る也
一 譬バ生得書物好にても、四書考経小学ハ格別の事、其余ハ多書
   を好むべからず、家業の障なれバ也、惣じて家業をさし置て何
   事も無益と思ふべし
   ロハ禍の門
一 ロハ禍の門
   倹約を可相守事
一 御高札日、万事奢いたすべからず
   寛政七丁夘歳秋八月吉日書

         川中島布施岡田邑

寺沢氏直興